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電子足跡:旧東海道歩き旅
 箱根宿から三島宿へ
  箱根峠を越え駿河国に入る道


プロローグ
 

旧東海道を箱根宿から箱根峠を越えて三島宿まで歩いたページです。

今日はJR三島駅から東海バスに乗り芦ノ湖湖岸の箱根町港まで移動して歩き始めました。
箱根関所を越えると箱根越えは終わりと思いがちですが、実は箱根山(箱根周辺の山の総称)の外輪山の箱根峠への登り道が続きます。箱根峠は相模国と駿河国の国境で現代でも神奈川県と静岡県の県境です。三島宿までは、尾根に続く下り坂を歩きます。途中、豊臣秀吉の小田原攻めで半日で落城した山中城址が在ります。勾配は箱根湯本から箱根宿までの登り道とそれ程変わりませんが、空が開けて開放的な感じがしますし、三島市街、相模湾、駿河湾、富士山が望めます。

注意事項:
私が歩いたときは、箱根峠を越して三島宿に下る道は一部通行禁止になっていました。国道1号線に迂回して進みました。


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歩きデータ
都道
府県
区間  通る宿場等 歩いた日 GPS移動距離
神奈川/静岡 (東海バス)箱根町港-(伊豆箱根鉄道駿豆線)三島広小路駅 箱根宿、箱根駅伝復路スタート地点、箱根峠、山中城址、錦田一里塚、三島宿  2022/06/01 16.6㎞

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箱根宿

昨日は箱根駅伝の往路ゴール地点の石柱まで歩きました。今日は復路のスタート地点から出発です。石柱の表面裏面にそれぞれ往路ゴール、復路スタートと刻まれています。
毎年1月3日に、この石柱から勢いよく飛び出して行く選手をTVで観ると、順位には関係なく、どこか希望の様なものを感じます。


芦川の石仏群
集落から少し離れた芦ノ湖の南端付近に数多くの石仏・石塔があります。台座には 『?国巡礼供養塔』と書かれているものもありました。最初の一文字は明かに "西" と読めるものもありましたが、いくつかは 雨or両 の様に見えました。


左の仏像は痛みや風化が激しいですが、どこかミロのビーナスの様に見えます。


安藤広重 東海道五拾参次之内 箱根 湖水図

出典:安藤広重 画 ほか『東海道五十三駅風景続画』,岩波書店,1919. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1902623
https://dl.ndl.go.jp/pid/1902623/1/30

この浮世絵は何処から見える風景なのか?という事なのですが、真ん中に描かれた山はかなりデフォルメされているので、現実の山とは思えません。画像では分かり難いですが左側奥に雪化粧した富士山、中程の湖岸に箱根権現(箱根神社)の社殿が見え、手前には大名行列らしき人達が見えています。この位置関係から考えるとこれから歩く箱根峠を越える外輪山付近の何処ではないかと思われますが確証はありません。
極端にデフォルメされ迫力があり、非現実的な岩肌の色彩がパッチワークの様に描かれ、そこの道を通る蟻の様に小さく見える人々が箱根越えの厳しさと美しさを上手く表現していると思います。

箱根峠へ外輪山を登る坂道

芦川の石仏群を越すと標高差100mくらいの芦ノ湖の南側の外輪山を登る坂道が始まります。石畳や杉並木も残り趣のある坂道です。向坂→赤石坂→釜石坂→風越坂→挾石坂と続いています。




挾石坂が終わると国道1号線に出会います。
出会いの場所はまるで獣道の様な雰囲気ですので三島側から歩いて来ると入口が分かり難いかも知れません。


国道1号線に出会うとあと少しで箱根峠です。

箱根峠
この場所では国道1号線が旧東海道です。普通に国道ですので旧街道の面影はなく、「ここが天下の嶮の最高地点か!」と思える様な雰囲気ではありません。信号機の名前でようやく箱根峠かと思うのみでした。ここで神奈川県から静岡県、相模国から駿河国に入りました。



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通行できませんでした

ようやく箱根峠を越え三島宿に向かって歩いていましたが、芦ノ湖CC付近の茨ヶ平・石畳入口が令和元年10月12日の台風19号による被害で通行止めになっていました。案内板に従って引き返して国道1号線を通り迂回しました。

迂回した1号線からの風景   真鶴方面の相模湾が見えました。


三島側の通行止め
ここまで厳重に通行止めにしてあると「けして、この道は歩いてはいけない!」と云う当局の強い意志を感じます。

箱根旧街道

通行止めの部分を迂回して来て、再度1号線から旧街道に入ります。ここから旧街道の雰囲気が良く残る道になりますし、下り坂ですので体力的にはきつくなく旧街道を楽しめます。その入口の所に接待茶屋跡が在りました。

接待茶屋跡
説明板によると、
江戸中期からここに接待茶屋が在り、往来する人や馬に無料で粥や飼葉を施していたそうです。驚いたのは、公的機関が運営していた訳ではなく、最初は金剛院別当が行い、その後 豪商加勢屋与兵衛が、明治になって八石性理協会、最後は鈴木家の利喜三郎・とめ、力之助、万太郎・とき 等の三代に渡って昭和45年(1970)まで続けられたという事です。
現代人の私としては、寺院や教会はともかく、鈴木家はその費用をどの様にしていたのかと気になるところではあります。

かぶと石
東海道中膝栗毛にもその名が出てくる場所です。
元々は兜石坂に在ったものを国道1号線の拡幅工事のときに移設したそうです。
由来は、兜を伏せたような形からそう呼ばれるようになった説と豊臣秀吉の北条攻めのときに、兜をこの石の上に置いたからと云う説があるそうです。

石畳の上を青葉と杉並木のなかを歩きます。




山中城跡
三島宿に向かう途中の山のなかに在る城です。
説明板によると、小田原の北条氏が永禄年間(1560年代)に小田原防備のために創築した城です。天正18年(1590年)豊臣秀吉の小田原攻めで、北条勢の17倍もの兵力に包囲され僅か半日で落城したそうです。
昭和48年に、空堀・曲輪などの全面発掘を行い公園化して整備したとの事です。天守閣や櫓がある城も良いですが、空堀や土塁だけの城跡もその地形に溶け込んだような景観も良いものです。


山中も東海道中膝栗毛に出てくる場所です。『両側に茶屋が店を張っている。』と書かれているのでこの写真のどこかの在った茶屋に入って休んだのかもしれません。

山中城址を過ぎると、道は森を抜け空が広がる解放的な風景になります。




曇ってなければ富士山が見えるはずですが、今日は雲の中で裾野しか見えませんでした。
少し進むと、全長400mの歩行者専用吊り橋、"三島スカイウォーク" が見えてきます。私は高所恐怖症なので素通りしました。


笹原新田付近



この付近の坂を "こわめし坂" と云います。あまりの急登で、背負った米が人の汗や蒸気で蒸されて、強飯(こわめし)の様になるからだそうです。

市山新田付近




箱根路の碑
旧東海道と国道1号線が伊豆縦貫自動車道と交差する付近に在ります。
ここまで来ると坂道はなだらかになり、天下の嶮を無事超えたという気持ちになります。

箱根八里は馬も越しますし、定年になって老境手前の男も越します。

錦田一里塚
日本橋から28里(約112㎞)の一里塚です。現在の国道1号線を挟んで両塚とも残っています。塚や塚木が残っているのは少ないですし、両塚とも残っている一里塚は珍しいです。国指定史跡になっています。



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三島宿
 


三島大社

安藤広重 東海道五十三次之内 三島 朝露

出典:安藤広重 画 ほか『東海道五十三駅風景続画』,岩波書店,1919. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1902623/1/31

三島大社の鳥居です。広重の浮世絵はこの場所の風景である事は容易に分かります。
『朝霧』なので朝早く駕籠や馬に乗って箱根方面に向かう旅人を描いています。




三島市街の風景
写真左:食彩あら川 丸平  築140年


写真左:世古本陣跡


三島市と云えば富士山の伏流水が湧き出る土地、市街地に豊富な水が流れています。


伊豆箱根鉄道駿豆線の三島広小路駅まで歩いて今日の行動は終わりです。

エピローグ
 

小田原側から登る箱根八里の道から一変して、三島へ下る道は開放的で同じ山塊の道とは思えないくらい印象が異なりました。
勿論、急登と下りの違いがあるので三島側から登れば印象が異なるかも知れませんが、どちらが良いとか悪いとかではなくて性格が異なる道を2日間で経験出来るのは魅力的でした。

END


2023/06/08 作成


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